偶然が重なり続けて、早20年。
- 僕と吉田さんのお兄さんは、予備校時代の同級生なんです。学生時代に、お兄さんを訪ねて実家に遊びにいった時に、弟である吉田さんがいたことから関係は始まります。
- そうですね。その当時、2人とも偶然、同じバイクを乗っていて。
- そうそう。お兄ちゃんそっちのけで、バイクの話で盛り上がっちゃって。もう20年ちかく前ですよ。
- それから数年後、一緒に仕事をするきっかけになったのも、兄に会うために、うちにご飯を食べに来た時ですよね。
- そうですね。久しぶりに再会して「いま何をしてるの?」っていう話になって。まだ吉田さんも外に働きに出ていた。
- 他の企業で、会社員をしていましたね。
- その時に「近いうちに、梓不動産に戻ってくる」っていう風に聞いたんだと思います。僕の会社は、現在ではビルダーとしての仕事が多いんですが、当時は分譲事業をメインでやっていました。
- そこから僕は本当にいろいろと神田さんには教わりましたよ。弊社の業務としては、当時は賃貸ばかりを扱っていたので、分譲のことはまったく分からない状態。それに、神田さんは、現場監督あがりの方なので、現場のことをすべて知っています。一方、私は不動産業ひとすじでしたから、現場のこともぜんぜん分からないわけです。「建築とはなんぞや」っていうところから「不動産の扱い方」まで、すべてを教わりました。僕にとっては、完全に師匠です。恩師ですよね。
- (ニヤッ)
- あ、照れてる(笑)
- まあ、お互いに持ち合わせていない部分があったので、補い合えるように思ったし、1人で仕事を進めるのと比べると、意見がぶつかったりすることもありますけど、意見が交差する時に生まれるものが絶対にあると思います。その交差点が、お互いの糧になっていたんじゃないかな。
- あとは、アレですよね。ちょっとリアルな話になりますけど……お金の話があって……。
- うん。お互いの借金問題ね(苦笑)。重くて暗~い話も、昔はたくさんしたよね。
自分でつくって、自分で売る。当たり前のこと。
- これまで、一番たいへんだったのは、瀬田の物件ですよね。
- うん、アレだね。あの時は一緒に手がけた物件が、なかなか売れなくて。当然、最終的には売れましたけどね。少し斬新すぎたのかな? 細長い土地に2棟の戸建てを作ったんです。とにかく細長かったから、玄関を正面に持ってくると、廊下がすごく長くなっちゃう。だから勇気を出して、中庭を共有させて、2棟とも真ん中から入ることにしたんです。まあ、2家族が毎日、同じ時間に家を出るわけではないですから。
- そう。そこまで考えてつくったんですが、売れなかった……。
- よく、掃除をしに行ったよね、2人で。
- はい。真夏の暑い時に(笑)
- 夏は植えた木や草が雑に伸びますから。それも手入れしないといけない。
- そういった辺りも神田さんに教わったことの1つですよね。「売れなければ、自分で掃除にいくんだ」っていう。メンテナンスだって、自分でやらないといけない。
- もちろん他の人に頼んでもいいんですよ。でも当然お金がかかるし、自分でつくったものが売れないなら、自分で汗水をたらして掃除をするのは当たり前のことです。雑巾がけもするし、窓ガラスも拭く。
- だからこそ、「早く売るべきだ」っていうことも、教わりました。
- 辛い思いをしたくなかったら、早く売る。そういうことですね(笑)。もちろん、彼から教わることもたくさんありますよ。例えば、僕はプライド的な面もあって、薄利多売するっていうのがビジネスビジョンの中にないんです。高く買って、そこにさらなる付加価値をのせて、より高く売るっていうのが僕のコンセプト。ただ、やっぱりそれをできるエリアっていうのは、限られているんですよね。
- 確かにそうですね。どの土地でもそれができるかというと、現実的には難しい。
- ちょっとした下町の相続案件で100坪の土地が出たとして、100坪のままで売れるかっていうと、そんなことはなくて、やっぱり細切れにしないといけない。そういうことは、彼から教わりました。